街の記憶
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ドラマの中に出てくる街に、三年ほど勤めていた。
そのドラマは芸達者の俳優たちが出てくるので、安心して見ていられる。
その街に良く似合ってる風情が画面の中に現れる。
それなのに、それを見るたびに懐かしさと一緒にとざらつく思いも混じってる。
拳をにぎって、ポカポカッと頭を叩きたくなるのです。



神楽坂はいろんな味の記憶が残る街。
老舗料亭にはこれっぽっちも縁がなかったけれど、紀の善のあんみつ、五十番の肉まん、毘沙門様の縁日のベビーカステラの屋台、今はなき佳作座で映画を見た後、必ず食べた広島お好み焼きのれもん屋、今問題になってる不二家のぺこちゃん焼き。(挙げてみると安いものばかりだわ。)
当時スレンダーだった(!)わたしは満腹感というものを知らず、坂を上がったり下ったりしながら、味を探訪する日々だった。

仕事は恐ろしいほど単調だった。
コンピューターのフォントをひたすら作る職人気質の社長の隣で、ひたすらお手伝いする仕事。
いつもいつもひたすらあせってた。もっと感動とか達成感とか充実感を味わえる仕事はないものかと思っていた。そうは思っても、何をしたらいいのか、何ができるのか、全くわからずに、霧の中のようなもやもやの気分をひきずって、坂を上り下りしてた。そんなことだから全く仕事に身が入らずによく失敗もしたし、遅刻もしたし、今思うと超ぐうたら社員だった。

遊牧民のように転職を繰り返して、なんとか今に落ち着いたけれど(たぶん落ち着いたと思う)、地味だけど、こつこつとやり続けることがどんなにか素晴らしいこととわかったのは、ずっと後になってだった。
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by calligraphy_m | 2007-01-27 00:01 | 墨(和) | Comments(24)
Commented by toraian at 2007-01-27 07:32 x
街の字が、
とぼとぼ歩く人や、忙しく歩く人に見えます。
いろいろな人生を背負っているのでしょうね。

田舎者の私がいたら、
右往左往している人になるでしょう。
Commented by shige-4343 at 2007-01-27 07:36
街と書いてイメージしてみると、通り過ぎていった日々が蘇ります。
神楽坂という響き。
30年前に近くの水道町に住んでいたことがあって、街の佇まいや情緒を、20代のころですから知る由もなく、寅さんを見ながら堅い椅子で、ぐっすり眠ってしまった、佳作座のことを懐しく思い出しました。
坂のある小さな路地は、今も変わらずその街にはあるのでしょうか・・
Commented by ピノコ at 2007-01-27 10:35 x
ドラマ「拝啓~」。毎回ビデオに撮って観てます。
脚本が倉本總だから。
もとのお話「前略、おふくろ様」が大好きだから。(脚本としてしかよんだことがないのですが)
そして、学生の時、神楽坂をよく歩いていたから。
歴史ある街は、いろんな人の思い出になっているのですね・・・
しみじみ思いました。

Commented by kazuyoo60 at 2007-01-27 10:48 x
ある程度で我慢して会社勤めしている人が殆どでは無いかなと思っています。ご自分の得意分野でお仕事の出来る方は一握りかも--、なんて思っています。今更もう取り返しは付きませんが。
Commented by zuko44 at 2007-01-27 12:35
神楽坂は20年ほど前に在宅ワープロオペ(今や化石な職業?)をしていて
やっと歩けるくらいの息子の手を引きながらデザイン事務所に出入りしてました。
当時そんなんだからまわりを見るゆとりなくってー。
最近何度か行ってみたら、ええー!こんなところだったっけー!な感じです。
味なんぞひとつも楽しめなかった、惜しいことをしてましたー。
Commented by soukichi at 2007-01-27 16:29 x
最初の数行読んで神楽坂かなと思ったらやっぱりそうでしたね(^-^)
私もこの街には少しだけ思い出があります。
私がいたのは早稲田のレタッチの会社でした。
ちょうどアナログからデジタルに移行しようとしていた会社。レタッチの排他的な職人みたいな人しかいないその会社で、なんの経験も無い私は行き詰まり、ある日、ストレスが高じて地下鉄の中でぶっ倒れたのを機に辞めました。入社からたった3ヶ月のこと。転職失敗の巻。
神楽坂はたまに社用の買い物に行ってました。
>遊牧民のように転職を繰り返して、なんとか今に落ち着いた
私もまったくおんなじです。手相を見られるオジサンから『渡り蟹』なんて言われちった!
街。ずいぶん太っちょの街。ぶくぶくと増幅するイメージ・・・
Commented by coeurdefleur at 2007-01-27 17:51
アニメの定番のセリフに、
「君になら出来る 君だけに出来る 君にしか出来ない」
そういうニュアンスのものがありますが、夢物語よね。
そういう言葉に憧れと夢を持ち続け、今の生活や仕事に満足していない人はおバカなんだと思う。

プロっていうのはその人の意識の問題なのだと思います。
洋服を買いに行く。
すぐさまやって来て説明するのは、ブランドだとか人気だとかそういうことばかり。
服屋の店員さんは何のプロなのだろうと思う。
素材のよい点、悪い点、お手入れの仕方
聞きたいのはそういうことなのに。

話が大幅にズレたでしょうか^^;
これだと思う仕事を(仕事でなくても)掘り広げたり、掘り下げたり。
それは社会でどういう意味を持つのか、人は何を欲しているのか、自分には何が出来るのか・・・
地道にこつこつって嫌いではありません。
継続って確かに力なりだと思います。
Commented by calligraphy_m at 2007-01-28 15:16
>冬雷さん
「街」の字のイマジネーションを広げていただいて、ありがとうございます。
荻野丹雪氏が「街」という字をよく書かれているので参考にしたのですが、これがなかなか...。
足元にも及びません、同じ字を書こうとした自分が悪うございました、御免なすってとすごすご退散...
とはせずに、書き捨て御免とポチッと更新するところが、わたしの厚顔無知っつうところなんですね。ふぃー。

わたしも方向音痴なもんだから、右往左往ばかりです。笑。
Commented by calligraphy_m at 2007-01-28 15:20
>shige-4343さん
佳作座をご存じなんですね。寅さん!素晴らしい!
ふふ、お互い年がばれますねぇ。笑。
確か水道町にある歯医者さんに通った記憶があります。
わたしも20代前半でしたから、神楽坂の街の色や匂いを十分満喫したとはいえません。
単調な仕事を終えた後、B級グルメで息抜きし、安く見られる映画で発散...
でもチントンシャンと三味線の練習する音が聞こえてくるときは
ああ、ここは花街なのねぇと思いました。
去年の夏、久しぶりに行ったのですが、見なれぬマンションがどでんと建っていました。
でも小さい路地(小さい階段もあったりして)の風情はまだまだ健在でしたよ。
Commented by calligraphy_m at 2007-01-28 15:24
>ピノコさん
まぁ、ピノコさんも神楽坂を歩いてたんですねぇ。
時は違うけれど、同じ街を上り下りして、同じ街の息づかいを感じてるって
なんだか考えると嬉しいです。同志のような気分です。
「前略...」はわたしも脚本で読みました。
ドラマの方はおぼろげに覚えているくらい...
(ほほ、年がバレますわねぇ。)
ほんのりと笑えたり、ほろっとしたり、しみじみするドラマってところは共通してるけど、違うところは二宮くんのような朴訥な息子がいたらいいなぁって思うこと。
雪乃ちゃんと呼ばせて、指の綺麗な人だったわなんて呟く母...。
うーん。色っぽいやねぇ。
Commented by calligraphy_m at 2007-01-28 15:28
>和代さん、そうですねぇ。一握りですねぇ。
その後転職した会社で、仕事が終わらなくて徹夜になったり、失敗して怒鳴られたり、イヤミ言われて胃がシクシクしたり...そんなのが全部自分の糧となって今があって、一応楽しいと思えることでお金がもらえて、沢山売れてありがとうと感謝されるってことは、ありがたいことだわーとしみじみしています。
Commented by calligraphy_m at 2007-01-28 15:31
>まぁ、芳さんも神楽坂!
ワープロ(!)...。かくいうわたしも、コンピュータのフォントを作る前は、写植(!)の文字を作ってました。社長がデッサンした字を、はみ出さないように墨入れするのです。単純作業だから、ついつい眠くなって舟をこぎ出して、墨がポトポトこぼれ、白のポストカードで修正がいっぱいできて...
あーー、なんか昔話をしたら止められなくなる!だれか止めてー。笑。
Commented by calligraphy_m at 2007-01-28 15:38
>そうきちさんまで神楽坂仲間!神楽坂同好会を作れそうだわ。
「アナログからデジタルに移行」といったら、どうやら同じ時期に同じ街で過ごしてたような?
ふふふ。そうきちさんも遊牧民でしたか。
会社や仕事に慣れるまでは(特にその仕事に自信が持てないうちは)本当にどんよりと落ち込んで、慣れれば慣れたで慢性的になって、あぁ辞めたいと思ったり...。よくこんなわたしを雇ってくれる会社があったなぁと、今は雇い主さんたちに感謝です。
「渡り蟹」?!「渡り鳥」にしてもらいたい!笑。

東京というとどでかい街なんだけど、神楽坂のような小さな街と街がつながりあって、路地のような狭い場所で沢山の人が息づいて、街の色や匂いを作っていくのね。
街が最初からあるのではなくて、そこにいる人たちで成り立っていくのねと思って書いた字です。
でもイマイチでした...。
Commented by calligraphy_m at 2007-01-28 15:43
>柊さん
ははは。耳が痛いわー。(あ、目が痛いになるのか...)
わたしにしか、とか、わたしだから、とか
そういう夢を持つことも、ある時は必要かもしれないけど
でも、自分の足元がしっかりしてなければ、夢で終わってしまうものねぇ。
「プロ意識を持って」と言われるけれど、あの頃のわたしってば
それがどういうことなのか、全く理解してなかったな。
(今も十分できてるかっていうと...?。笑。)
上を見るでもなく下を見るでもなく、ちょっと斜め前の方を向いて
こつこつと歩いていくのがいいような気がします。
Commented by fastfoward.koga at 2007-01-28 23:42
今度トウキョーへ行ったら、行ってみます。
神楽坂がどのへんかもよくわからない関西人ですが、あの街の雰囲気にちと溶け込みたいなと思いました。

去ってから街のよさがわかるということは、往々にしてあるものですね。
わたしも、以前の職場があった街に行ってみたくなります。
特に奈良は飲み屋しか行きませんでしたから(笑)。
もったいないことしたなー。
Commented by calligraphy_m at 2007-01-29 15:43
>コガさん
京都から神楽坂にわざわざ行くほどのことか...?とちょっと疑問に思いつつも、ついでがあったら行ってみてください。
まんじゅうカフェ(http://www.mugimaru2.com/)なんてどうでしょう?(この前行ったら休みだったので、実態は良くわからないのですが...。)

奈良の飲み屋って、なんだか素敵な響きだわ。鄙びたイメージ。(単なるわたしのイメージですが...)
飲み屋だけってのは、確かにもったいない!(笑)
ちなみにわたしも上野に勤めてたときは、アメ横あたりで飲んでクダ巻いてましたわ。おほ。
Commented by sarasa-reisia at 2007-01-29 19:58
コツコツとやり続ける事がどんなにか素晴らしい事とわかった。
本当に。。。
分かるまでに長い時間がかかりますけどね。
この頃は、あとどれ位時間があるのだろうと、そちらが気になっております^^;
まぁ、出来るところまで精一杯!ですね。

あっ、街のテーマと離れてしまった。。。
Commented by naopazzo at 2007-01-29 22:43
 おお,北海道の人間としては,石炭のような黒さの書ですね。石炭もいいです。

 こつこつ・・・こつこつやる人は,本当に素晴らしいですね。こつこつやり続ける人を素直にすごいな,と思えるようになったのは本当にごく最近です。

 なんだか,東京の昔の話は懐かしいね。
Commented by calligraphy_m at 2007-01-30 19:04
>更紗さん
あとどれ位時間があるのだろう>>>ふはははは。
大丈夫、大丈夫。100歳超えるくらい生きるのだから
まだまだ時間はたっぷりありまするぞ。
この間、山登りはする(足どりがしっかりしてる!)は
水墨画の先生してる(う、うまい!)は
かくしゃくとした百歳のおじいさんが紹介されてました。
スーパーマンのようでした。
それを見たら、バリバリとなんでもこなせそうな気持ちがしてきましたよ。
(なんて単純!)
Commented by calligraphy_m at 2007-01-30 19:08
>naopazzoさん
おお、石炭!さすが北海道に住んでらっしゃる!
たまに黒々としたものを書いてみたくなるのですが、平板になってむずかしい...。
東京?いろんな地を踏みしめているのでしょうか?

本当にわたしも最近です。
あっちで寄り道、こっちでつまずいて、そっちでひと息つきながらも
「地道にこつこつ」をテーマに踏みしめていきましょう。
Commented by しほ at 2007-02-25 12:28 x
はじめまして。
人気ブログランキングからやってきました☆
書のことは何も分からない私ですが、吸い込まれるように
次々と拝見させていただきました。。
この『街』という書、とても好きです。
また伺います♪
Commented by calligraphy_m at 2007-02-25 22:52
>しほさん  いらっしゃいませ。
この街の字ですが、なかなか書けなくって悪あがきしました。
なんか違う...と今見直してみてもしっくりしないで、ためいきついてます。
でもしほさんに好きと言ってもらえると、また違うイメージで書いてみようかなぁなどと考えています。ありがとうございます。
また感想を寄せてもらえれば、とても嬉しいです。
Commented by しほ at 2007-02-26 09:50 x
私のところにも、コメントありがとうございました。
そうなんですか?私は一目で惹かれてしまいました。
私も自分の過去の作品で、奇妙な出来上がりの
ものがありますが、それもその時の自分なんだ
なぁって思います。。
また来ますね☆
Commented by calligraphy_m at 2007-02-26 22:40
>しほさん
うんうん、確かに。
そのときの自分が反映されてるのだから
しょうがない!ここらであきらめるかーーーって放り投げるのです。笑。
せっかく書いたのだからと、いつものもったいない精神で「書き捨て御免!」となるわけなんです。
言い訳ごにょごにょしてるわー。許してくださいましー。
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